えふ

 唾液で濡れた舌は軟体動物並にグロテスクで気持ち悪いと思う。自分の身体にこんな物がくっついているのが不愉快で仕方ないと思う。
 皮膚が薄くて内蔵がむき出しになっている口や性器なんて最高に悪趣味だ。
 常々そう思っているが、僕は今まさに他人の性器を自分の口に含んでナメクジみたいに緩慢な速度で粘膜同士を擦り合せている。
 他人といっても相手は笹川了平。悪趣味極まりない行為をするのはこれで3回目。別に数えているわけじゃないが、忘れる程大した数でもないというだけだ。

「ふっ・・・はっ」

 頭の上の方で、押し殺した吐息が微かに吐き出される低い音がして、身体の奥の方からじわりと熱が滲み出すような錯覚を覚える。この感覚がたまらない。
 直接自分の性器を嬲られるより、笹川がいつもは絶対に出さない湿った低い声を吐き出させる方がよっぼど性的興奮を覚える。 
 じっとりと濡れた舌を真っ赤に膨張して起ちあがっている竿の部分に絡めて、撫で上げる。先の方を軽く口に含んで優しく溝に歯を立ててやる。

「・・っぁひばっり・・・っ!」

 掠れて切羽詰まった声と一緒に、硬く節くれ立った(それでもまだまだ細い)指が僕の髪をかき分けて地肌に爪を立てる。
 視線を上げれば、眉間に皺を寄せ、歯を食いしばって快楽に耐える笹川の顔が見える。隠しようもない程に上気した目尻の赤に思わず舌なめずりした。
 それから追いつめるように喉の奥まで深く銜え込んで目一杯吸い上げてやると呆気なく終わりが訪れた。生臭くて苦みのあるどろどろした体液を一滴残さず、ゴクリと解りやすい音を立てて飲み込む。名残惜しくてちろりと舌先で萎えた性器の先端を舐めると、ぶるりと笹川が全身を震わせる。
 耐え切れないと言うように溢れた笹川の甘く低い吐息を聞くだけで、なんだかもうひどく満足している自分が滑稽で笑い出したい。
 そんな心情とは裏腹に下半身に集中した熱は、思春期に有りがちな自己主張を叫んでいて身体には笑い出す余裕なんて全くなくなっていた。ベルトを外して制服のジッパーを引き下ろし、下着の中で完全に起ち上がってる性器に、笹川の硬い皮膚の手を引き寄せる。
 まだるっこしい言葉を並べずとも、笹川は右手で荒っぽく僕を愛撫しながら歯がぶつかるんじゃないかって勢いで口づけてくれた。

 目を閉じて、悪趣味な性器を笹川の手が荒っぽく弄る所や、軟体動物じみたあのグロテスクな舌同士を絡ませているシーンをカメラのレンズ越しに見ているように想像する。

 興奮しすぎてさっきの笹川より早く射精する羽目になった。

 嫌な気はしない。


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