愛情≠食欲

 内側の厚みの有る皮膚は触ると汗ばんで湿っている。指は間接部分が硬く大きくなっていて、温度の高いそれに触れていると胸がつまって呼吸が苦しくなった。

 昼休みにバンテージを巻き直しているとめずらしく教室に居た雲雀が勝手に前の席の座り、物珍しそうにこっちを見ているので「やってみるか?」と聞いたら、頷いてバンテージを受け取ったが、その後はオレの手を掴んだまま視線を落として動かなくなった。
 同じ位の大きさの手でもオレの手に触れている雲雀の指は細くて長い、少し硬い皮膚は冷たくはない。薄ピンクの爪は口に含むと砂糖の様に甘いのではないだろうか?
「むっ?」
 ぼんやりと妙な事を考えていたら雲雀がオレ手に顔を近づけて第一関節の辺りに口を寄せて

ガリッ!

 その動作は、試合のTV中継で時折挟まるリプレイ映像の様にスローモーションで知覚できたのに全く抵抗できなかった。皮膚が裂けて血が滲むと雲雀はそれを舐めとり
「しょっぱい」
 そう言った顔が、はじめて海をみた子供のように純粋に呆けていたので終に怒るタイミングを逃してため息と「ああ、そうか」という言葉しか出てこなかった。


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